秋、「いのちを還す森」の手入れをはじめました
2020年10月、11月と、「いのちを還す森」の尾根から早池峰山への展望を開く作業をはじめました。
「いのちを還す森」の尾根からは遠く早池峰山(ハヤチネ)を望むことができます。遠野の人が「あの山に帰る」というとき、それはハヤチネを指すことが多いのではないでしょうか。
ハヤチネは、長く修験道の修行の場であり、信仰の対象でもあります。
ハヤチネを望む尾根のあたりは、一度皆伐されたままになっていた場所で、あたりには実生のコナラやクロモジやミズキやススキが茂ってきています。
私たちは、薮化した場所を刈り払って、小道をつくり、ハヤチネへの視界を遮る雑木を胸の高さに切り揃えて展望を開きました。根本ではなく胸高に伐れば、春には芽を吹き土にしっかりと根を張れるので、地形を壊す原因にはなりにくい。
やがて葉が茂りだしたら、その分は刈って、広場を囲む大刈り込みにしてゆく計画です。
この尾根を毎年みんなで手を入れていけば、ここは柳田国男が「遠野物語」の序文に記したとおりの、附馬牛からハヤチネへの眺望が開きます。地域の人びとと遠野と関係を持ってくださる人が、ひとときを過ごしてもらえるような、展望の丘になるよう目指します。
片づけながら手入をすれば、そこは風景になる
指導してくださったのは、田瀬理夫(たせみちお)さん。
著名なランドスケープ アーキテクトで、ハヤチネンダの現地パートナー、クィーンズメドウ カントリーハウスの環境をつくってきた方です。
先を見通して全部をやろうとせず、「今日はこれだけをやろう、と決めましょう」と教わりました。
作業となると、とかく成果や効率に追われがちですが、ゆっくり無理せず着実に。
その場で伐った木や枝は丁寧に始末してゆきます。
手を入れた後が片付いていれば、そこは風景になります。
だから「いつやめてもいい」。
青空にはくっきりと早池峰の稜線が浮かび、お山に見守られているような気持ちになります。
手ノコで雑木を伐り、枝を払う。
クロモジが鮮烈な香りを放ち、山の気が身体を通り抜けていくようです。
先頭で木を伐る者、枝を払って運ぶ者、伐った木を片付ける者。
クイーンズメドウ・カントリーハウスとハヤチネンダのメンバーに、林業に詳しいゲストを迎えたチームの中で、自然に役割が生まれ、助け合い、声を掛け合って、心地よい関係が紡がれてゆきます。
ひと汗かいたら切り株に座って一休み。
早池峰を望みながら喫するお茶の豊かなこと。
みんなで語り合い、笑い合い、こんな時間がいつまでも続けばいいのに、と思います。
都会にいると「やらなければならないこと」を一覧表にして、「今日できなかったこと」を数えがちです。
でも、「今日できたこと」に満ち足りて眠りにつくのは、なんと嬉しいことでしょう。
こうした里山整備であれば、初めての人でも、仲間と楽しみながら作業することが出来ます。ハヤチネンダでは、楽しくできる里山メンテナンスの作業を「ハヤチネ山ノ上倶楽部」のプログラムとしてみなさまとご一緒したいと考えています。
森づくりは、自然を感じ、輩に出逢う、またとない機会になりました。
伐採枝を美しくまとめて分解する、バイオネスト
作業で出た木の幹や枝は、バイオネストにしました。
バイオネストは、庭や公園の剪定で出た枝を鳥の巣のように組んでいく方法です。
草や葉は真ん中に入れておき、分解したら植栽地に戻します。
田瀬理夫さんの考案によるもので、良いところは、
・その場からバイオ資源を外に出さない(ゴミにしない)
・作業した後も風景になる
・風景になるので「いつやめてもいい」
山では、公園と違って、太い枝や幹が出ます。
通常は枝を円形に編むそうですが、今回は太い枝を持ち込みやすいよう、馬蹄形に積まれていきます。
おおよその形ができた後は、同じ方向に枝を刺していけば良く、相当な量の伐採枝が全て収まって、その収納力にあらためてみんなで驚きました。
出来上がったバイオネストにみんなで並んで一休み。クッション性があってなかなかの座り心地でしたよ!
※この作業は「緑の募金」の助成を受けて行っています。