【終了】「いのちと暦<冬>」高月美樹さん×須藤章さん/2022年2月17日オンライン
早くもフキノトウが顔を覗かせているところもあるようですが、岩手の森はまだまだ一面白銀の世界です。それぞれの土地にそれぞれのリズムがあるように、人にも人のリズムがある。そしてウイルスたちにも。ここ数年は、そんな生命たちのリズムや動きを強く体感する時間の中にありますね。さて、2022年のンダ部は「いのちと暦」をテーマに、二月の満月の夜からはじめてみようと思います。 お呼びするのは昨年の6月、ンダ部 on WEB #03 「いのちと暦<夏>」にお招きしたお二人、和暦研究家の高月 美樹さんと、相模湖で野菜やハーブの自然栽培している有機農家、須藤 章さんです。
農的な暮らしから見る生命観
須藤さんがご自身の農園で開催している「さとやま農学校」には毎年多くの参加者が集まりますが、ここ数年は参加希望者が増えているそうです。土に触れたり、植物たちの動き方に目を凝らす時間を持ち始めると、だんだん自分が暮らしている環境の微細な変化にも意識が向くようになる。「日が暮れるのが遅くなった?」とか、「今日は満月だから夜が明るいな」とか、そんなことから。須藤さんの農園に通う人が増えているのも、今の暮らしの中で感じづらくなっている自然のリズムを、あるいは自分たちの生命の躍動を、人々が改めて求めはじめているようにも思えます。
和暦研究家の高月美樹さんも、和暦研究のかたわら、肥料も農薬も使わない有機農業を実践されています。高月さんの和暦手帳、「日々是好日」には、彼女のそうした農的な日常を通して得た自然の摂理への諒解が美しく編み込まれていて、ページをめくるたびに四季折々、その季節がそばにあるように感じることができます。
今回のンダ部では、日々農的な暮らしと向き合っているお二人に、自然のリズムから感じることのできる生命観についてお話しいただきます。土や種、植物たちや動物たちとの関わりの中で、高月さんや須藤さんは、私たち人間と自然との間にどのような繋がりを見ているのか。気候変動や、パンデミックに脅かされる現代の私たちのいのちは、自然から離れてどう立ち現れている存在なのか。昨年の内山節さんの講演も振り返りながら、言葉にしていただく時間になればと考えています。ぜひ、ご一緒ください。
日 時:2022年2月17日・木曜日・19:00〜20:30(終了後21:00までの放課後部活を予定)
場 所:オンライン(Zoomを予定)※見逃し配信あります
参加費:無料(ご招待 学生の方・山ノ上倶楽部会員)
1,000円(ご参加)
2,000円(ご参加+応援)
3,000円(ご参加++応援)
※ンダ部の方は割引コードをご利用ください。
申込み:Peatixのイベントページからお申込みください
参加方法:申し込み頂いた方へ当日の午前中に視聴URLをご案内いたします
イベントへのお申込みはこちら(Peatix)
https://ndabu-onweb-09.peatix.com/
登壇者プロフィール
高月美樹(たかつき みき)
LUNAWORKS代表。和暦研究家。見て、読んで、感じる手帳『和暦日々是好日』を制作、発行(2003〜)。パラダイム・シフトをテーマに自然の一部として生きる未来の生き方を提案している。『婦人画報付録、和ダイアリー』(ハースト婦人画報社)、『にっぽんの七十二候』(エイ出版) 『いやしの七十にゃ候』(KADOKAWA)『まいにち暦生活』(ナツメ社)『365日にっぽんのいろ図鑑』(玄光社)ほか監修。『月刊マクロビオティック』、WEB暦生活・七十二侯連載、NHKオンライン講座、日本CI協会講師。
LUNAWORKS|月と暮らす旧暦手帳 「和暦日々是好日」
『365日にっぽんのいろ図鑑』
須藤章(すどうあきら)すどう農園代表 「さとやま農学校」主宰
1984年千葉大学園芸学部園芸学科卒。在学中に「有機農業」に出会い、NGO スタッフとしてアジアの農業支援に携わるなかで「自給的農業」に惹かれるようになる。NGOを辞めて埼玉県小川町で有機農業研修生として過ごした後は、天然酵母パンの草分け「ルヴァン」で働き、石窯のパン屋を神奈川県の旧藤野町で開設。宮古島ぐらしの2年間を経て相模湖に戻り「すどう農園」を設立する。
これまでの紆余曲折、多様な経験を活かして、都会の人たちに里山の多様性の豊かさや愉しさを伝えていきたいとの想いから、「さとやま農学校」や「講座・火と暮らす」「街で自然農」などを開講中。
www.sudofarm.net
インスタグラム(すどう農園) sudo_farm
フェイスブック(すどう農園) https://www.facebook.com/Madovege/
フェイスブック (須藤 章) facebook.com/akira.sudo.37
<以下須藤さんより全文>
1984年に千葉大学園芸学部園芸学科を卒業。専攻は育種学。
その一方で旅が好で、主にアジア各地の農村を旅しました。
今のような「在来種」という言葉がほとんど知られていない時代でしたが、内外の農村を巡る中で、伝統的な野菜や植物の遺伝資源が失われつつある様子を見ました。山奥の村に行っても、化学調味料や日本の種苗会社の種子が売られている様子は、なかなかショックだったわけです。大学の授業とは別に国内の農家で教わりながら、農薬も化学肥料も使わない「有機農業」を知り、将来をどうしたものかと迷いました。農家でない人間が就農できる余地は、今以上に狭かった時代です。海外とのつながりも深めたいとあれこれ悩みながら、卒業後は海外協力団体(NGO)のスタッフとして農業協力に携わりながら自給的農業へ惹かれていくのでした。
アジアの農村で自立を目指す人たちと東京の生活の往復は、やはり東京の自分の暮らしに矛盾ばかりが感じられて「他人の国のお手伝いよりもまず自分が自立しないと」という想いが日に日に強くなり、かなり自分自身が厳しい精神常態に追い込まれました。これは決して愉しい経験ではありませんでしたが、この時間は意味のある経験だったと思います。やはり人は、苦しいことも経て、そこを抜け出たところに、ひとつ新しい境地にたどり着けるのではないでしょうか。
その後は都会の仕事を辞めて埼玉県小川町での有機農業研修のお世話になりました。さらにそこから天然酵母パンの草分け「ルヴァン」を経て、石窯のパン屋を神奈川県の旧藤野町で開設。ここでようやく、自分が世界とつながることができた。そういう実感を得たのです。いま振り返れば、それまでの道筋にはすべて意味があります。無駄な時間はなかったといえます。宮古島ぐらしの2年間を経て相模湖に戻り「すどう農園」を設立。
ここまでの道のりは紆余曲折、枝分かれ、迷い道でした。それは今も続いています。そんなこんなを含めて受け入れてくれる里山をありがたく思います。これまでの色々な経験を活かして、都会の人たちに里山の多様性の豊かさや愉しさを伝えていきたいとの想いから今は「さとやま農学校」や「講座・火と暮らす」「街で自然農」などの講座を中心にしています。