【終了】”森林美学”から紐解く、里山の風景 & 初冬の遠野たより/ 小池孝良さん/2023年12月9日(土)オンライン
今年の周年記念特別講演は、小池孝良先生(北海道大学 名誉教授/林学/森林科学)にお越しいただきます。
先生は、北海道大学で100年続くという伝統講義「森林美学」を教えてきた方で、
森林生態・科学の専門家です。原生林とは違う、人が関わることで続いていく里山の森。人が関わることでつくられる森の美しさとはなにか、それは人の心や行動にどんな影響を与えるものか。
北大の学生になったつもりで、一緒にお話をうかがってみませんか?
この日は遠野からの配信を予定していますので、この1年のハヤチネンダの活動や、暖炉の火、通信がとどけば馬たちの今、そして、みなさまと手入れを続けてきた森の変化の様子もご案内する予定です。
どなたでも無料でご参加いただけますので、ぜひいらしてください
イベントへのお申込みはこちら(Peatix)
https://ndabu-onweb-sp4th.peatix.com/
ハヤチネンダはこの11月27日で4周年を迎えます。少しずつではありますが、山ノ上倶楽部の会員も増え、風景をつくる定例活動「森入リ」にも多くの皆さまがご参加くださいました。心から感謝申し上げます。
さて、ハヤチネンダは”いのちと自然の物語をつむぎなおす”、というテーマを掲げて活動している団体ですが、里山で森づくりの作業を進めるほどに、私たち人間の自然への関与がどうあれば良いのか、迷うことも増えてきています。厳しくも豊かな迷いでありますが、4周年となる今年は、北海道大学から小池孝良先生をお招きし、人が森に手を入れるときの「美学」という視点を学んでみることにしました。
北大で100年も続く、”森林美学”という伝統講義とは
北海道大学農学部には約100年にもわたって続いてきた伝統講義「森林美学」という学問があります。私たち日本人のうち、特に都市部に住む人ほど森林を「美しいもの」とイメージしている人が多いと思いますが、実際のところ、東西に長く、高低差もある日本には多様な森林の風景がありますし、環境の変化によって、森林は常に姿を変え続けています。
定まることのない森林における「美学」とは何を学ぼうとするものなのか、ドイツで発祥した「森林美学」が日本で100年も大切にされてきたのはなぜなのか、北大の伝統講義を受け継いで講じてこられた小池孝良先生にお話をうかがいます。
以下は、小池先生からいただいた、今回のご講演に向けたコメントです。これは「当日お話しないこと」なのだそうで、ますます楽しみになります!
森林美学は、1988年に開設した札幌農学校森林科が、開発と保全を目指し、招いた初代教授の新島善直がドイツ留学後の1908年に導入した体系である。もとは1885年、当時、ドイツのザーリッシュが祖父から引き継いだ1000ヘクタールの自身の山林経営を通して、経済林の森林美学を提唱し、1910年までに3訂版を出版した。しかし、各地での大戦によって、その内容が世界に広がることはなかった。日本では1918年に「自然に習う」姿勢を保ち、高弟/村山醸造とともに新島が日本独自の森林美学を出版したが、関東大震災によって出版元も焼け落ち、理念が全国へ展開しなかった。
森林美学の実践方法は、ザーリッシュ後、ドイツのC. ワグネルが導入した空間的規制を実行するための5つの指針(1.土地が最適であること、2. 樹種が混交した森林構成であること、3. 樹木の生育が環境条件に適している、4.災害からの保護機能が十分にある、5. 搬出路などの「技術組織」が整備されている)を参考に、里山への接し方を考えたい。
日本で最初に適正な山林管理を認証された尾鷲・速水林業の速水勉氏の言葉(2007)「木一代、人三代。私は美しい森を造ろうと思って山を管理したのではなく、孫・子が山で暮らせるように手入れしたら、世間は美しい森と言って下さる」が、森林美学の本質を表わす。この実践方法としてフォレストスケープを導入し、風景作りの話題を提供したい。
先生はまた、このようなメッセージを発信されています。
森林はそれ自体が多様な生態系です。その豊かさや美しさを維持するためには、幅広い科学的知見と具体的な技術、森づくりの哲学と森に関わる喜びや楽しみが、両輪となっていることが不可欠です。森林美学は、つきつめれば、まだ見ぬ子孫のために豊かな森林を利用し残す科学を推進するための基礎学。時代が変わっても変わらない意義が、そこにあると考えています。
森林美学が提示するもの 小池孝良 談 / 神籬 第66号(2022.10 発行) 特集:日本人が森に学ぶこと。より
いかがでしょうか。「森林美学」を通して、人が森に関わることの意義を考え、そして私たちのフィールドで実践してみませんか?
私たちが山ノ上倶楽部の活動として毎月実施している「森入リ」では、"いつか自分が還る風景を自分でつくる"を森づくりのテーマのひとつとしています。これまでご一緒頂いた方も、これからご参加いただくことを考えている方も、ぜひご一緒ください。
今年も、遠野のクイーンズメドウからおとどけします。馬たちにも!
当日は遠野から中継を挟みつつ配信いたします。延長戦の放課後倶楽部では、中継リクエストにもお答えしてみようと思いますので、お忙しい時期とは思いますが、土曜の午後のひとときに、一緒いただけたら嬉しく思います。 通信の届くところに居てくれたら、エリアナ、エリ、エリザ、アル、サイの今をお伝えできるかもしれません。
※このプログラムは、公益社団法人 国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」の助成を受けて実施します。
”森林美学”から紐解く、里山の風景 & 初冬の遠野たより
日 時:2023年12月9日(土)14:00~16:00
(終了後16:30ごろまでの放課後部活を予定)
場 所:オンライン(Zoomを予定)
*見逃し配信あります
参 加 費 : 無料
1,000円(+応援)
3,000円(++応援)
5,000円(+++応援)
*周年イベントにつき、どなたでも無料でご参加いただけます
*活動への応援をいただけたら大変ありがたく嬉しく思います
お申込み:Peatixのイベントページからお申込みください。
参加方法:お申込み頂いた方へ当日の午前中に視聴URLをご案内いたします。
イベントへのお申込みはこちら(Peatix)
https://ndabu-onweb-sp4th.peatix.com/
案内人プロフィール
小池 孝良(こいけ・たかよし)
北海道大学名誉教授 農学研究院研究員。
1953 年兵庫県生まれ。名古屋大学大学院農学研究科博士後期課程中退。林野庁林業試験場、スイス連邦 森林・雪・景観研究所博士研究員、東京農工大学助教授、北海道大学農学部演習林教授などを経て現職。2016 年より島根大学生物資源学部非常勤講師。専門分野である森林生理生態学の研究と同時に、北海道大学の講義・森林美学を引き継ぎ、ザーリッシュの著作『森林美学』の翻訳(共編)、論文・講演などを通じて森林美学の普及に尽力してきた。『森林美学への旅』(海青社)、『森林保護学の基礎』(共編、農文協)、『木本植物の生理生態』(共編、共立出版)、『森への働きかけ』(共編、海青社)など著書多数。
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ハヤチネンダの「ンダ」は納得や諒解の合言葉。「ンダ部」では、私たちの〈いのち〉と自然をめぐる様々な考察や表現・思いについて学び合う時間を提供しています。今を生きる私たちの心の糧になるような「生と死」の物語を旅しませんか? 特定の宗教・哲学等に依ることなく、死生観について安心して聴き、語ることのできる場づくりを目指しています。ぜひご一緒ください。
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遠野の自然に触れ、森づくりに参加する「ハヤチネ山ノ上倶楽部」募集中
オンラインを中心としたンダ部に対して、現地遠野の森で活動を重ねているのが、山ノ上倶楽部です。ほぼ月イチで行っている「森入リ」では、いつかこの森に眠りたい、と思えるような森がつづくようにみんなで手入れを行っています(2泊3日の宿泊プログラム)。他、特別プログラムも人気です。こちらも会員募集中!*会員割引あり(ハヤチネ山ノ上倶楽部について)