【募集中】設立6周年記念特別プログラム 『アフリカ、そして屋久島へ。医師が探し求めた“良い死”とは』/杉下智彦さんを迎えて/2025年12月11日オンライン・無料
ハヤチネンダは、早いものでこの11月27日で財団設立6周年を迎えます。
山ノ上倶楽部会員はもとより、ようやく動き始めた埋葬プロジェクト「いのちを還す森」へのお申し込みも頂いており、着実に仲間が増えていることに心より感謝しています。
6年目の記念プログラムは、医師であり、医療人類学者でもある杉下智彦さんをお迎えして「良い死」をテーマにお話を伺います。
どなたでも無料でご視聴いただけますので、是非ご参加ください。
イベントへのお申込みはこちら(Peatix)
https://ndabu-onweb-6th.peatix.com/
さて、みなさんは「アマビエ」を覚えていますか? そう、いまから5年ほど前、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、SNSを中心に話題となり、果ては厚労省のホームページに掲載されるほど大流行したあの、人魚のような形をした疫病封じの妖怪です。

今回お招きする杉下智彦先生は、医師として、また公衆衛生学の専門家として多忙な時を過ごしながら、あのアマビエの大流行を「日本にも、まだそのチカラがあったんですよ」と嬉しそうに話されます。どういうことでしょうか。
なぜ、アマビエだったのか?
杉下先生は、外科医として聖路加病院に勤務したのち、青年海外協力隊としてアフリカのマラウイ共和国立病院に赴任されています。滞在中、アフリカの人たちが、現代の日本人が考えるよりも、ずっと広くて深い自然や宇宙のもとで「生と死」を捉えていることに感銘を受け、アフリカにおける伝統的な医療システムと「妖術」信仰について研究を始められました。
アフリカの各地で伝統的な儀式に参加し、研究するなかで、「まじない」のような儀式には、それぞれ理路整然とした思考と自然への畏れが表現されていて、それは社会とって大切な役割を持っていることがわかったといいます。
かつて全国の森や山を跋扈(ばっこ)した妖怪たちがすっかり姿を潜めた2020年の日本に、こつ然と現れたアマビエ。日本人が神でも仏でも星でもなく、「妖怪・アマビエ」に疫病退散の願いを託したこと、日本社会にまだ妖怪に役割を求める想像力があるということが、大変興味深いのだと話されました。
死者の仕事
杉下先生はまた、死者に役割のあることの豊かさについても話されています。
以前ある村で、長老のおじいさんをずっと取材したことがあります。何年ぶりかに訪ねると、いつも家の入り口に座っていたおじいさんがいませんでした。「おじいさんはどこ?」とご家族に聞いたら、「先生が立っている土の下にいるよ。」と、家の入り口の土の下に埋葬したと言うのです。私がびっくりしていると、「おじいさんは毎晩呪いが入ってくるのを家の入り口で防いでいるんだ。その仕事は他の誰にもできないから、夜になったらいつも出てきて家を守っているんだよ!」死んでも仕事があるし、家族の一員として、それに見合ういろんなものがあるんですね。
東京女子医科大学 国際環境・熱帯医学講座より
死んでしまったら終わりで、「何も無い」のだからお墓も葬式も必要ない、と言う声を耳にすることがあります。でも、死んだら家族を守る、他の誰にもできないキャリアが死後に待っている、ということが生前からわかっていたなら、どうでしょう?いつか必ずやってくる「死」に対して、希望のような感覚を持てるような気がしてきませんか?
屋久島の自然と「良い死」
アフリカ赴任を終えた杉下先生は、その後ハーバード大学で公衆衛生学、ロンドン大学で医療人類学を修められ、アフリカを中心に30か国以上で保健システム案件の立案や技術指導にあたられました。2022年、屋久島に移住し、現在は離島の地域医療と死生観の研究に取り組んでおられます。


自然が豊かな屋久島には、まだ多くの古い慣習や妖怪の話が伝え継がれているそうです。豊かな自然環境の中で、死生観はどう育まれていくのか、大いなる自然への畏怖と、いのちの自覚にはどんな関係があるのか。またそうした先には「良い死」があるのか、「良い死」にたどり着くためには何が必要なのか、先生の現在のご研究についてもお話を伺います。
「I(個人)の死」から「We(私たち)の死」へ?
先生は医師を目指す前からずっと「死」への興味が尽きなかったそうです。若き日に抱いた「死」への興味から始まった探求の道。 アフリカで目にしたコミュニティ全体で死者を弔い、高齢者を支える「We(私たち)の死」のこと。 そして、太古の自然が息づく屋久島で考える、いのちと自然、「死」との関係性とは――。
医療が高度化し、人生100年時代といわれる現代。私たちは「死」を遠ざけ、あるいは個人の問題として捉えがちです。しかし、「死」を社会的な視点で見直してみると、本人だけでも、親しい人だけでもなく、地域やコミュニティ、また他の生き物を含めた自然との複雑な関係性の網が見えてきます。
「死」について考えることは、いまを「生きる」ことを見つめ直すことでもあります。 杉下先生のお話を通して、ご自身の死生観や、これからの生き方について一緒に考えてみませんか?
この公開セッションは、現代社会における「死」のあり方に疑問を感じている方、「良い死」や「納得のいく最期」について考えたい方、医療、看護、介護の現場で死生観に関心のある方におすすめします。また、アフリカや屋久島での暮らし、地域医療に興味をお持ちの方や、自然と人間の「いのち」のつながりについて考えたい方にも、ぜひご参加いただきたい内容です。
ハヤチネンダ設立6周年記念特別プログラム
『アフリカ、そして屋久島へ。
医師が探し求めた“良い死”とは』
日 時 :2025年12月11日(木)19:00~21:00
※途中と最後に参加者を交えて、対話の時間を設けます
案内人:杉下智彦さん
場 所 :オンライン(Zoomを予定)
*見逃し配信あります(対話の時間以外)
参加費 :無料
お申込み:Peatixのイベントページからお申込みください。
※お申込みいただいた方へ当日の昼頃視聴URLをご案内いたします。
イベントへのお申込みはこちら(Peatix)
https://ndabu-onweb-6th.peatix.com/
特別プログラムゲスト プロフィール

杉下智彦(すぎした・ともひこ)さん
医療法人観音会 屋久島尾之間診療所 理事長/院長
東京女子医科大学グローバルヘルス部門 元教授 非常勤講師
医師、外科医、保健システム専門家、医療人類学者。アフリカを中心に30か国以上で保健システム案件の立案や技術指導に携わる。研究課題はアフリカにおける伝統的な医療システムと「妖術」信仰。2015年に国連で策定された「持続可能な開発目標(SDGs)」の国際委員。2016年医療功労賞。大学教授(グローバルヘルス)を経て、2022年4月より屋久島尾之間診療所を承継。現在、屋久島健康圏構想プロジェクト、屋久島死生観研究プロジェクトを推進中。








